zakka story vol.5
FOG CITY DINER COOK BOOK
料理のレシピブックは昔も今も数多く出版されています。そのアプローチの仕方はさまざま。美しい写真をメインに展開したもの、料理の教科書的なもの、人気料理家やフードコーディネーターを前面に押し出したもの、最近では人気料理ブログ発のレシピブックもよく売れているようです。これは、素人っぽい写真とブログのごちゃっとした臨場感が特徴でしょうか。
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そんな数あるレシピブックの中で、今、いちばん気に入っているのが、この「FOG CITY DINER COOK BOOK」(フォグシティは、霧の多いサンフランシスコの愛称。フォグシティダイナーは、今もサンフランシスコに実在します)です。この本の存在は、2年程前にお菓子研究家の福田里香さんから教えていただき、何軒か洋書屋や古本屋を回ったのですが、見つからず。日本のアマゾンで注文をし、約半年待ってみたのですが、結局“在庫がない”ということで購入できず。(今思えば、本探しもしてくれる「ユトレヒト」のオーナー江口さんにお願いすればよかったです……)ここサンフランシスコに来てから、再度アメリカのアマゾンで注文し、やっと手に入れました。そんな経緯もあって、私にとってはちょっぴりスペシャル感のある本なのです。
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この本は1993年、ナパバレーを拠点にカリフォルニアらしい料理を提案し、広めたと言われている料理家Cindy Pawlcyn氏により執筆されました。発行部数は5万部以上と言われていますので、なかなかのものです。紹介されているレシピは、いわゆるアメリカンダイナー(の流れを汲む)料理。サンフランシスコに実在する同名のダイナーのメニューの数々です。ここの定番、ブレッドの作り方に始まり、スープ、サラダ、サンドイッチ……お決まりの“ポークチョップ、ジンジャーアップルソース添え”もあります。それから、デザート、ドリンクも網羅、充実した内容です。
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レシピはもとより、特筆すべきは、潔いエディトリアルデザインです。色は白と黒と赤の3色にこだわり、料理の写真はなく、ダイナーで働く人々とその場の空気が伝わる生き生きとしたモノクロの写真のみ。それから、ナンセンスでくすっと笑えるイラストレーションがところどころに、そして大胆にあしらわれています。レシピブックに果たしてリアルな出来上がり写真は必要なのかどうか……改めて考えさせられる1冊でもあります。
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さて、早速この本を見ながら作ってみた料理が“Cole Slaw”。東京でたまにランチを食べに行っていたアメリカンダイナースタイルの炭火焼のハンバーガー屋さんのコールスローが大好き(やや甘口なんですね)で、この本の作り方なら、アレを再現できそうな気がしたからです。材料は全部で11種類。すでに家にあるものは2種類しかなく、食材の買い出しに。これが結構大変。というのも、マスタードはパウダーでしかも“Colman”のもの……という具合に注意書きがやたらと多いのです。何軒かスーパーマーケットやプロ向けの食材屋さんを訪ね、材料がすべて揃ったのは、なんと、作ろうと思い立ってから2週間。……にもかかわらず、いざ作り始めると、「1/2 heavy cream」はカロリーが多すぎる、ちょっとやめておいたほうがいいからヨーグルト(?)にしておこう……といった具合にみるみる材料が変更。ちょっぴりミラクルな味のコールスローになりました。