zakka story vol.3
CUP-A-JOE
アパートメントからワンブロック上へあがったところに、いつも程よい人数の人たちで賑わっているコーヒーハウスがあります。名前は「カップ ア ジョー」。ジョーはイスラエル出身で体の大きな、この店のオーナーの名前です。通りに大きく突き出た看板が目印で、この近くを通り、この看板が見えるといつもなぜかほっとするのです。

このお店に初めて訪れたのは、6年前。北欧出身のテキスタイルデザイナー、ロッタ•ヤンスドッターさんが当時サンフランシスコに住んでいて、彼女の本を作るために取材でサンフランシスコに滞在した時に、教えてもらいました。撮影をしたアトリエから近かったため、何度も足を運びました。彼女がいつも「このお店はこの界隈で、ものすごく人気があるのよ」と言っていたのを思い出します。若手アーティストの絵が飾ってあるし、インターネットもできるし、アイスクリームの種類もたくさんある。「でも、普通のコーヒーハウスなのにね」と当時は少し不思議に思ったものです。
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今回、サンフランシスコに到着し、アパートメントに入って4日間は、部屋でインターネットが使えませんでした。そのため、このコーヒーハウスへよく、ラップトップを持って足を運びました。同じような人が何人もいて、いつ行ってもほぼ満席状態。でも、そんな時は合席させてもらいます。そしてたわいもない会話を少し楽しんだりします。お店には、国籍も年齢も、その人のもつ雰囲気も様々……本当にいろいろな人が集まります。なにかアイディアを探しにきたアーティストだったり、仕事の打ち合わせをしているグループだったり、犬連れのおじいさん2人組だったり、自営業風の日本人だったり、品のいい白人のおばあさまだったり。よくみかけたのは、IT業界風のインド人の男性。あとで、同じアパートメントに住んでいることがわかり、エレベータなどで一緒になったときは、「最近、カップ ア ジョーへ行っていますか?」というのが、挨拶代わりになっています。
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お店のすぐ向かいにあるアパートメントには、サンフランシスコ歴の長い日本人のCさんが住んでいます。彼女はヨガの先生をしていて、少し前に知人から紹介され、最近は家に食事に招いていただいたりしています。彼女も、この「カップ ア ジョー」にはよく通っていて、オーナーのジョーさんとも、とても親しいのです。なんでも、日本からサンフランシスコに引っ越してきたばかりのときにホテル住まいで、家を探すためにラップトップを持ってここに通ったのだそう。その様子を見ていたオーナーが、「前のアパートメントに空きができたらしいよ」と教えてくれたのだそうです。恩人ですね。おととい、彼女は早速私にジョーさんを紹介してくれました。

一見、特別なものはなにもないのですが、極上の居心地の良さがあって、不思議とリラックスできて、また来たくなってしまう……。最近、このコーヒーハウスにたくさんの(程よい人数の!)人が集まる理由がわかったような気がします。サター通りとレベンワース通りのコーナーという立地、この場所の持つ特別な空気感。それから、オーナー、ジョーさんの人間が大好きだという気持ち。あとは、看板とマグカップにも描かれている、ごく普通なんだけど、どこか親しみやすいお店のトレードマークですかね。