zakka story vol.4
Big Key Holder
アメリカではカフェにトイレがないことがよくあります。だから、街を歩いていてトイレに行きたくなってカフェへ入るときは、オーダーをする前にトイレがあるかどうかを確認しなければなりません。7〜6割は、「ここにはトイレはありません」との答えでしょう。また、運良くトイレがある場合は、鍵をレジで受け取ってから使用するスタイルが多いです。これもセキュリティーのひとつなのでしょうね。
今日は、このカフェのトイレの鍵のホルダーの話です。数年前にニューヨークのSOHOにあるカフェで渡されたトイレの鍵に大きな泡立て器がついていたことがありました。鍵はもちろん、普通のサイズです。でも、ホルダーが大きすぎるのです。このバランスはあり得ないでしょう。というか、これは、キーホルダーではなくて、調理器具ですから……。でも、いいですよね、この感覚!「なんで泡立て器に鍵がついているの?」と聞いたら「みんながなくさないように、大きいのをつけているのよ」とレジのお姉さんは答えてくれました。理由はいたってシンプルです。彼女たちにとっては、“nothing special”(どうってことない)なのでしょう。でも、私にとっては、この鍵とホルダーのありえないマッチング、バランス感覚が面白くてしがたがありません。
先日、サンフランシスコでも、このありえない“バランス感覚”に、出くわしました。グレンパーク駅の近くにあるカフェで、友人が車でピックアップしてくれるのを待っていたときのこと(エスプレッソと小さなパイをオーダー)。初老の感じのいいおじいさんが、アイスドドリンク用の透明プラスチックの空のカップを持って、店内をうろうろしているのです。そして、それを、若いフレンチ風の女性に渡しました。「あ、あれは、トイレの鍵に違いない」。案の定、カップのふちには、ゴールドの小さな鍵が。私もこのリレーに加わりたくなって、若いフレンチ風の女性から、カップを受け取って、トイレへ。別に行きたくはなかったんですけどね……。このお店のすごいところは、このビッグなキーホルダーのついた鍵を置く専用のホルダーがあること。アイアンで出来ていて、サイズがぴったり、かわいいです。私がトイレから出てきたら、初老の感じのいいおじいさんが、「鍵はそこのホルダーに戻すんだよ」と笑顔と目線で教えてくれました。
さて、次はどんなありえないビッグキーホルダーに出会えるのか……楽しみにしたいと思います。